昨日と今日,地元の家畜保健所からの依頼で和牛(黒毛和牛)の採血をしました。特定の伝染病(ヨーネ病と牛白血病)に関して感染しているか否かを調べるための採材です。
ロープで牛の頭を柵に繫いで,人間が後ろに回って尻尾の裏側の静脈から採血するのですが,牛が動かなければ2~3秒で終わります。でも,おとなしい牛ばかりとは限りません。頭は固定されていても体は動けるので,激しく左右にお尻を振ったり後足で蹴ったりする牛もいます。性格の個体差もありますが,おとなしい牛が多い農家では新しい牛を導入してもやはりおとなしくなり,暴れ牛が多い農家では新しい牛も暴れるようになるものです。
採血の時,牛の個体確認を兼ねて,飼い主に牛を繫いだり押さえたりしてもらうのですが,おとなしい牛の多い農家では「はいよ,はいよ,痛くない痛くない」とか「すぐ終わるよ~」とか優しい声をかけながら,なだめるように体をポンポンしているものです。反対に暴れる牛の多い農家では,牛がちょっと動くたびに「動くなこらぁ!」「ばかやろー!」と怒鳴って,肘打ちをくわせたり蹴とばしたりする人もいます。暴れる牛のほとんどは針を刺す前から暴れており,つまり,痛みに敏感ということではなく,怖がってパニックになっているのです。パニックになっている時に怒鳴り声をかけられるのでさらにびくつき,2秒ですむ作業が数分かかってしまうこともあります。そうなるとこちらもスネやモモを蹴られたり足を踏まれたり大変な目に合います。
優しく扱っていればおっとりした牛になり,乱暴に扱っていればビビリ牛になる,というのは当然のことで,これは前々から気付いていましたが,今回,もうひとつ気付きました。
「痛くない痛くない」「すぐ終わる」などは牛の立場に立った言葉ですよね? 反対に「動くな」「ばかやろう」は自分の感情をぶつけているだけです。自分の感情をただ相手にぶつけていては,かえって相手は思い通りにはならない,ということがよくわかります。
とくにしつけなど考えずに生産のために飼っている家畜ですらこうなのですから,日常的に感情のやりとりをする犬であればなおさらこの影響は大きいものです。腹立ちまぎれに叱るのは絶対にやめましょう。
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大福母 (木曜日, 23 4月 2020 23:15)
我が家の北海道犬は病院が苦手で困ります。叱ったりせずに、なだめてますが、なかなか克服できません。今はおやつがもらえる病院に行くようにしています。少しずつ慣れることを願っています。
(管理者) (金曜日, 24 4月 2020 00:48)
大福母さん,コメントありがとうございます。
意図的にトレーニングをしない限り,犬にとって動物病院は「無理やり拘束されて痛いことをされる場所」という認識になりますから,苦手で当然です。そこで叱れば「無理やり拘束されて痛いことをされた上に叱られる場所」になってしまうので,叱らずになだめる,で大正解です。
でも,それだけではすでに持ってしまった嫌な印象をひっくり返すのは難しいですね。必要があって動物病院に行く時に何とかしようとするのではなく,必要がない時に根気よくトレーニングを続けて行きましょう。